理学療法の位置付け

理学療法とリハビリテーションの関係

理学療法は、理学療法の法的定義で説明したように、手段としての治療法です。これに対して、リハビリテーションは、リハビリテーションについてで説明したように、全人間的復権という目的としての概念です。ですから、これら2つの言葉の意味や用途は明確に異なります()。

表 理学療法とリハビリテーション

理学療法 リハビリテーション
治療法 理念、概念
例として、運動療法や物理療法などがある。 全人間的復権を意味する。多面的に捉えるため4領域に分けられることもある。

医学的リハビリテーションとリハビリテーション医学

医学的リハビリテーションは、リハビリテーションが主で、医学的がリハビリテーションを修飾しています。リハビリテーションについてで見たようにリハビリテーションの概念の一つの領域です。これに対し、リハビリテーション医学は、内科学や外科学などと並ぶ医学の中の1つの分野です。これらの2つの言葉も意味や用途は異なります()。

表 医学的リハビリテーションとリハビリテーション医学

医学的リハビリテーション リハビリテーション医学
理念、概念 医学の一つの分野
リハビリテーション(全人間的復権)の一つの要素で、主に身体機能の回復を図る医学は診断(原因究明)、治療、予防から構成される

理学療法とリハビリテーション医学

公益社団法人日本リハビリテーション医学会が監修しているリハビリテーション医学・医療コアテキストという書籍があります。公益社団法人の学会が監修した書籍であり、標準的な内容だと思います。この書籍の目次の「総論4 リハビリテーション治療 」を見てください。以下の項目が列挙されています。

総論4 リハビリテーション治療
1 リハビリテーション治療の概要
2 運動療法
3 物理療法
4 作業療法
5 言語聴覚療法
6 義肢装具療法
7 薬物療法
8 患者心理への対応
9 手術療法
10 リハビリテーション診療における栄養管理

理学療法学概論を学んでいる学生さんなら、すぐに気づくと思いますが、「理学療法」という言葉がありません。これは、理学療法がないがしろにされているわけではなく、運動療法、物理療法、義肢装具療法などに分かれて表現されているものと思われます。理学療法はリハビリテーション医学の中でも広い領域を担っていると言っても良いでしょう。ちなみに、多くのリハビリテーション医学の教科書もこれと似たような目次構成になっています。

リハビリテーション科以外の診療科と理学療法

日本における理学療法誕生までの歴史でも触れていますが、理学療法士という職業が誕生する前から整形外科の手術後に治療体操や物理療法が行われていました。当然、今でも整形外科の手術後に行う理学療法は重要です。

身体に障害をきたす原因となる疾患はたくさんあります。実際に理学療法を行うことができる疾患は、厚生労働省が定める診療報酬で細かく決められており、5領域に区分された疾患別リハビリテーションに記されています [1][2][3][4][5]。このリンク先には、理学療法を行うことができる疾患や疾患の状態が説明されています。これらの疾患そのものの治療は、リハビリテーション医学の専門医が行うこともありますが、多くの場合、例えば整形外科の専門医や脳神経外科の専門医などが行います。

理学療法士は医師の指示(処方)を受けて初めて患者さんに理学療法を行うことができます。理学療法士が医師から処方を受ける際、大きく分けて2つのパターンがあります。一つは、障害の原因となる疾患を診療する医師から処方を受けるパターンです。もう一つは、別の医師から紹介を受けた医師から処方を受けるパターンです()。

図 理学療法士が処方を受けるパターン

[1] PT-OT-ST.NET – 平成30年診療報酬改定情報7部 リハビリテーション

[2] PT-OT-ST.NET – 平成30年診療報酬改定情報7部 リハビリテーション – H000心大血管疾患リハビリテーション料

[3] PT-OT-ST.NET – 平成30年診療報酬改定情報7部 リハビリテーション – H001脳血管疾患等リハビリテーション料

[4] PT-OT-ST.NET – 平成30年診療報酬改定情報7部 リハビリテーション – H001-2 廃用症候群リハビリテーション料

[5] PT-OT-ST.NET – 平成30年診療報酬改定情報7部 リハビリテーション – H002運動器リハビリテーション料

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