理学療法のプロセス

理学療法のプロセス外観

理学療法がどのような流れで行われるのかについて、統一されたプロセスはありませんが、概ね<図 理学療法のプロセス>のようになると思います。この記事では、理学療法のプロセスについて全体的に説明します。

 

図 理学療法のプロセス

 

医師の指示のもとに行われる

理学療法士及び作業療法士法の第2条3項には

この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。

と定義されているように、医師の指示が理学療法の起点になります。

厚生労働省による診療報酬の公示では、第7部 リハビリテーションの4において

(疾患別リハビリテーション)の実施に当たっては、医師は定期的な機能検査等をもとに、その効果判定を行い、別紙様式21から別紙様式21の5までを参考にしたリハビリテーション実施計画を作成する必要がある(平成30年度診療報酬改定より)

と記載されており、リハビリテーション実施計画が医師の指示に当たります。リハビリテーション実施計画書の一例として別紙21の1を見てください(PDF)[1]。

このような医師の指示の必要性は介護保険でのリハビリテーションにも定められており、厚生労働省令「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」の第13条十九 [2] において、

介護支援専門員は、利用者が訪問看護、通所リハビリテーション等の医療サービスの利用を希望している場合その他必要な場合には、利用者の同意を得て主治の医師又は歯科医師(以下「主治の医師等」という。)の意見を求めなければならない。

と記載されています。また、平成30年度介護報酬改定における解釈通知「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」の3(7)20では次のように記載され、医師の指示がより明確に記載されています。 [3]

訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護サービスを利用する場合に限る。)及び看護小規模多機能型居宅介護(訪問看護サービスを利用する場合に限る。)については、主治の医師等がその必要性を認めたものに限られるものであることから、介護支援専門員は、これらの医療サービスを居宅サービス計画に位置付ける場合にあっては主治の医師等の指示があることを確認しなければならない。
このため、利用者がこれらの医療サービスを希望している場合その他必要な場合には、介護支援専門員は、あらかじめ、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めるとともに、主治の医師等とのより円滑な連携に資するよう、当該意見を踏まえて作成した居宅サービス計画については、意見を求めた主治の医師等に交付しなければならない。

 

[1]  PT-OT-ST.NET – 【様式・医科】平成30年3月5日 保医発0305第1号

[2] 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ – 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

[3] 厚生労働省 – 平成30年度介護報酬改定について – 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について

障害評価の解釈には情報収集が不可欠

国際生活機能分類(ICF)の3つのレベルである心身機能・身体構造、活動、参加の中で、理学療法に関係する項目の評価は不可欠で、これらの生活機能の評価を適切に行うことは理学療法士の責任になります。しかし、生活機能の3つのレベルの評価を解釈するためには、生活機能に障害をもたらす原因となった疾患や外傷の状態、その治療について、カルテや他職種から情報収集する必要があります。例えば、ICFの心身機能の第7章に「b730 筋力の機能」があります [1]。筋力の機能が障害された代表的な症状は筋力低下です。筋力低下を引き起こす原因は多くあります<図 筋力低下を引き起こす様々な原因>。骨折治療のために長期間にわたり関節を固定した結果として筋力が低下した場合と、神経難病により脳からの指令がうまく筋に届かなくなる場合と、老化により自然現象として筋がやせ細った場合とでは、原因が異なりますので医学的な治療が異なりますし、筋力増強運動の効果の程度や効果が現れ始める時期も異なります。

 

図 筋力低下を引き起こす様々な原因

 

また、生活機能の3つのレベルに影響する背景因子(家庭環境や職業など)、個人因子(来歴、価値観など)は問診や面接によりご本人から聞きますが、家族やカルテ、他職種からも情報収集します。例えば、職業が生活機能の評価の解釈に影響を及ぼす例を<図 職業と必要になる身体機能の例>に示します。手関節の骨折を受傷して、同じように手首や指の動きが悪くなり、握力が低下したとします。身体機能の障害が同じでも、職業により必要となる機能は異なりますし、場合によっては回復に費やすことのできる期間も異なるかもしれません。このような場合は、身体機能や日常生活活動の評価結果が同じであっても、それを解釈する際には異なる視点が必要になります。

 

図 職業と必要になる身体機能の例

 

[1] 厚生労働省 – 「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について

全体像の評価と病態に応じた評価の関係

一般的に理学療法の評価は、1)問診や面接、観察により障害の全体像を評価し、2)全体像の評価に対し、病態に応じた検査・測定や標準化された評価指標を用いて精査ないし検証する、手順で行います。このような評価のプロセスを全体(トップ)から細部(ダウン)へ評価を進めるということでトップダウン形式の評価と言います。

一方で、まず病態に応じた評価を行い、生活機能の障害を網羅して調べてから、全体像の評価へと進めるボトムアップ形式の評価もあります。この評価方法は障害の評価に慣れていない学生や新人理学療法士にとっては障害を見落とすことが少ないので有効です。また、意識障害がある患者さんや術後などで動きが制限されている患者さんにはボトムアップ評価が有効です。

統合と解釈は三要素を同時に処理する

これまで説明したように、理学療法のプロセスは医師からの指示を受けると、情報収集し、全体的な評価、病態に応じた評価を行います。情報収集と全体的な評価、病態に応じた評価の3つを合わせてここでは「理学療法の前提」と表現することにします。この理学療法の前提をもとに、どのような(短期、長期)目標を立てるのか、どのような理学療法プログラムを行うのか、つまり、前提、目標、プログラムを合わせて同時に考える過程を「統合と解釈」と言います。

目標とプログラムは相互に影響し合う関係にあります。理学療法の前提のもとに、目標を立ててからプログラムを組むという順序が自然ですが、プログラムの結果(効果、成果)を予測しながら目標を立てるという側面もあります。すなわち、熟練した理学療法士の頭の中では、これらの三要素を同時に処理して成り立つ可能性を導き出しているものと思います<図 統合と解釈の模式図>。

前提となる情報や評価の内容は時間経過とともに変化しますので、その都度、統合と解釈は繰り返されます。

 

図 統合と解釈の模式図

 

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