統合失調に対する運動療法

出典

Gorczynski P, Faulkner G: Exercise therapy for schizophrenia. Schizophr Bull, 2010; 36(4): 665-666

背景

身体活動やエクササイズは健康に有益なことは多く報告されているので、統合失調症の人にも有益な可能性があります。

目的

統合失調症の人や統合失調症に類似した症状の人において、身体活動やエクササイズによりメンタルヘルスに効果があるかどうかを明らかにすることとしました。

調査方法

文献検索エンジンのCINAHL、EMBASE、MEDLINE、PsycINFOからCochrane Schizophrenia Group Trials Register(2008年12月)に関する論文を調べました。また、関連した論文の参考文献を調べました。

採択基準

統合失調症の人や統合失調症に類似した症状の人において、身体活動もしくはエクササイズの介入と通常ケアもしくは他の治療法との効果の比較を無作為化比較試験にて調べた研究を採択しました。

データ収集と分析

アブストラクトや論文の引用数、論文の質の評価、データを取り出せるかを調べた。2つの対立項目の比率(binary outcomes)において、fixed effectモデル(母数効果モデル)によるリスク比とその95%信頼区間を計算しました。可能であれば、重み付けをしたNumber Needed to Treat(治療必要数)とNumber Needed to Harm(有害必要数)、その95%信頼区間を計算しました。連続数値の結果(continuous outcomes)において、加重平均差の値を用いて有効なスケールから非傾斜のデータを合成しました。

結果

3つのRCT研究が採択基準に当てはまりました。エクササイズの運動、精神面における効果が評価されました。介入中の脱落者数はどの研究でも似たようなものでした。2つの研究では、エクササイズと通常ケアとを比較し、精神状態の陰性症状に有意な改善が認められました。1つの研究では、対象者10人に対し、Mental Health Inventory Depressionを用いて評価し、平均差が17.50で、95%信頼区間が6.70, 28.30でした。もう1つの研究では、対象者10人に対し、Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS) のnegative項目でh評価し、平均差が−8.50で、95%信頼区間が−11.11, −5.89でした。精神状態の陽性症状に対しては明らかな効果は認められませんでした。通常ケアと比較してエクササイズ群では身体的健康も改善しました。1つの研究では、対象者13人に対し、平均差が79.50、95%信頼区間が33.82, 125.18で差が認められましたが、体重やBMIには差がありませんでした。エクササイズとヨガを比較した研究もあり、ヨガの方が精神状態に良い影響がありました(41人の対象に対し、PANSSの合計点の平均差が14.95、95%信頼区間が2.60, 27.30)。この研究では、ヨガグループの方がQOLスコアが有意に良好でした(41人を対象にし、World Health Organization Quality of Lifeの身体項目で平均差が−9.22、95%信頼区間が−18.86, 0.42)。 有害作用(Abnormal Involuntary Movements Scaleの合計点により評価)に違いはありませんでした。

結論

今回のレビューに用いた研究は少なく、身体機能や精神機能の評価が統一されていませんが、今回の結果から、統合失調症の人に対して通常のエクササイズを導入することは可能で、身体的、精神的な健康、さらにはQOLに効果をもたらす可能性があると言えます。結論を出す前にさらに大規模なRCT研究が必要なようです。

所感

2010年の報告であり、統合失調症の人に対する運動の効果を示したメタ分析としては先駆けとなった報告なのかもしれませんね。近年、より大規模で質の高いRCT研究も増えてきているようですので、具体的にどのような介入を行なっているのか、今後確認したいと思います。

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