日本における障害者施策の変遷

障害者施策の主な歩み

内閣府が発行する障害者白書に我が国の障害者施策の主な歩みがまとめられています[1]。これは膨大な量の情報ですが、厚生労働省の資料「障害者の新たな福祉制度の検討について(平成22年5月12日)」の13ページにごく簡単に障害者施策の歴史がまとめられています。

この資料は、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」により、障害者自立支援法から「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (障害者総合支援法)」に変更する過程での資料のようです。

[1] 内閣府 – 障害者白書 平成30年版 障害者白書(全体版) – 参考資料 障害者施策の主な歩み

[2] 厚生労働省 – 障害者の新たな福祉制度の検討について(平成22年5月12日)

日本における障害者の法的定義

日本における障害者の法的定義は、法律により表現が異なっており、前項で示しました障害者施策の歴史のように変遷していると言えます [1] 。

児童福祉法(1947年に交付)

第四条 2 この法律で、障害児とは、身体に障害のある児童又は知的障害のある児童をいう。

身体障害者福祉法(1949年に交付)

(身体障害者)
第四条 この法律において、「身体障害者」とは、別表(※)に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

※ 別表に定められている障害の種類
1)視覚障害
2)聴覚又は平衡機能の障害
3)音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害
4)肢体不自由
5)内部障害

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神衛生法として1950年に交付)

第五条 この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はそ の依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。

知的障害者福祉法(精神薄弱者福祉法として1960年に交付)

※ 「知的障害者」の定義規定はない。

障害者基本法(心身障害者対策基本法として1970年に交付)

第二条 この法律において「障害者」とは、身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。

発達障害者支援法(2004年に成立)

第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。

障害者自立支援法(2005年に成立、2006年に施行)

第四条 この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定する精神障害者(知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。)のうち十八歳以上である者をいう。

2 この法律において「障害児」とは、児童福祉法第四条第二項に規定する障害児及び精神障害者のうち十八歳未満である者をいう。

[1] 厚生労働省 – 社会保障審議会障害者部会(第42回) – 資料3-(2)障害者の範囲(参考資料)

身体障害の範囲拡大の経緯

年月 障害の範囲
1950年4月 身体障害者福祉法施行
〔障害の範囲〕
・視覚障害
・聴覚障害
・音声・言語機能障害
・肢体不自由
・中枢神経機能障害
1967年8月 障害の範囲拡大
・心臓機能障害
・呼吸器機能障害
1972年7月 障害の範囲拡大
・じん臓機能障害
1984年10月 障害の範囲拡大
・ぼうこう又は直腸の機能障害
・そしゃく機能障害
1986年10月 障害の範囲拡大
・小腸の機能障害
1998年10月 障害の範囲拡大
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
[1] 厚生労働省 – 社会保障審議会障害者部会(第42回) – 資料3-(2)障害者の範囲(参考資料)

障害者数の推移

内閣府が発行している障害者白書によると [1] 、日本の障害者数は年々増加しています。参考資料 障害者の状況の<図表2 年齢階層別障害者数の推移(身体障害児・者(在宅))>を見てみてください。障害者数は増加していますが、年齢階層別に見ると65歳以上の高齢者の増加が圧倒的に多いことが分かります。これに対し、同ページの<図表3 年齢階層別障害者数の推移(知的障害児・者(在宅))>を見ると、こちらも障害者数は年々増加していますが、年齢階層別に見ると、若い世代の増加も顕著です。

身体障害者は高齢化が進み、脳卒中などの病気や怪我により増える傾向にあり、知的障害者はこのページでも指摘されているように

以前に比べ、知的障害に対する認知度が高くなり、療育手帳取得者の増加が要因の一つと考えられる

という要因が影響しているものと思われます。

[1] 内閣府 – 平成30年版 障害者白書(全体版) – 参考資料 障害者の状況

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