関連職種との法的関係

理学療法士の業務と関連職種の業務

理学療法士の業務

理学療法士及び作業療法士法 [1] の第十五条で理学療法士の業務について、

理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。

2 理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて、理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条の規定は、適用しない

と記載されています。

まずは、保健師助産師看護師法第三十一条第一項及び第三十二条の規定を確認してみましょう。

保健師助産師看護師法

第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

第三十二条 准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

このように規定されています。そして、第五条、第六条は

第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
第六条 この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。

と定められています。ここに記載されている「療養上の世話又は診療の補助」というのは相当に広い意味合いがあります。理学療法士は、保健師助産師看護師法に示されている診療の補助のうち、理学療法士法及び作業療法士法の第二条において理学療法と定義されていることを行うことができることが法律で定められているということになります。

法律上、理学療法士は相当なスペシャリストと言えるでしょう。

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

次に、理学療法士が行うマッサージ ですが、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律には、

第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

と規定されていますが、医師の指示のもとに理学療法士が行うマッサージ は、この限りではないことが理学療法士及び作業療法士法に示されているわけです。

医師法

理学療法士が行う理学療法は、診療の補助とはいえ医業の一部としての医療行為ですので、医師法の定める医師の業務について理解し、理学療法士が該当する箇所は遵守する必要があります。

第四章 業務
第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない
第十八条 医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない
2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。
第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。
第二十一条 医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
第二十二条 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。
一 暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
二 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
三 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
四 診断又は治療方法の決定していない場合
五 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
七 覚せい剤を投与する場合
八 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合
第二十三条 医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。
第二十四条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。
第二十四条の二 厚生労働大臣は、公衆衛生上重大な危害を生ずる虞がある場合において、その危害を防止するため特に必要があると認めるときは、医師に対して、医療又は保健指導に関し必要な指示をすることができる。
2 厚生労働大臣は、前項の規定による指示をするに当つては、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。

[1] 電子政府の総合窓口e-Gov – 理学療法士及び作業療法士法

[2] 電子政府の総合窓口e-Gov保健師助産師看護師法

[3] 電子政府の総合窓口e-Gov – あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

[3] 電子政府の総合窓口e-Gov – 医師法

業務独占と名称独占

業務独占資格

有資格者以外は当該業務に従事することを禁じることにより、資格者に対して業務を独占させるとともに業務上の一定の義務化を課する資格については、国民の生命や財産の安定を図る上で重大な役割を果たす者等に限定するとともに、業務独占の範囲を必要最小限のものとする。

厚生労働省:医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 第3回資料 [1]

名称独占資格

国民の利便や職業人の資質向上を図るため、一定の基準を充足している旨を単に公表し、又は一定の称号を独占的に証することを許す資格については、国が設けるにふさわしい特別な社会的意義を有する者に限定する。

厚生労働省:医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会 第3回資料 [1]
[1] の資料を見ると、理学療法士は業務独占であり名称独占と示されています。ただし、理学療法士の業務独占は「保健師助産師看護師法第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、診療の補助として行う業務である」と注釈があり、診療放射線技師や衛生検査技師などの業務独占とは異なることも示されています。

[1] 厚生労働省 –  第3回「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」資料2:看護師、助産師及び准看護師の名称独占について

医業と医業類似行為

理学療法士が提供する理学療法は医師の指示のもとに行う診療の補助であり、医業です。これに対し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、および柔道整復師が提供するあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、および柔道整復は医業類似行為です。

医業も医業類似行為も法律て認められたものです。

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