生活機能(障害)に応じた評価

なぜ生活機能(障害)に応じた評価が必要か

生活機能(障害)に応じた評価は、見たり聞いたり触ったりなどして得られる現象を、より客観的に表現する手段です。客観的に、定量的に表現することにより以下の利点があります。

  • 対象者の変化を確認できる
  • 他の人と比較したその人の特徴を理解できる
  • 第三者(家族、他の医療従事者など)に伝えることができる

それぞれの疾病には、それぞれの病態があり、特徴的な障害像を示すので、病態の特徴を考慮して開発された評価を行うことで、見たり聞いたり触ったりして得られた印象を客観的にに表現することができます。

尺度からみた評価の種類

名義尺度

電話番号やID、診断名など、単に区別をするために用いられる尺度です。

区別をするための尺度なので、等しいかどうかに意味はありますが、大小関係に意味はなく、数字であっても差や比に意味はありません。電話番号や郵便番号を足したり掛けたりしても意味のある数字は得られないことから、理解できると思います。

順序尺度

大小関係に意味はありますが、差や比に意味はない尺度です。

例えば、アンケートで、「3.良い、2.普通、1.悪い」という選択肢があったとき、これらの大小関係には意味がありますが、良いと普通、普通と悪いの間の間隔が一定とは限りませんので、「悪いから良いに2改善した」とか「クラス平均で0.8改善した」とかと言うことはできません。

間隔尺度

大小関係に加え、差にも意味がある尺度です。比には意味がありません。

例えば、「気温10℃と気温15℃の差は、5℃です」ということはできますが、「気温10℃の2倍は、20℃です」ということはできません。

何故でしょうか?

摂氏(℃)は、氷の融点を0℃、水の沸点を100℃と定義した数字です。温度の単位には、絶対温度であるケルビン(K)もあります。絶対温度で0Kは、摂氏-273℃です。気温10℃は-263Kです。気温20℃は-253Kです。絶対温度に換算してみると、摂氏を2倍することが意味がないと分かりますね。

テストの点数も、0点であればその科目の能力がゼロ(全くない)ことを意味する絶対的な数字ではありませんので、間隔尺度と言われることもあります。

比尺度

比尺度は、大小関係にも、差にも、比にも意味がある尺度です。「ゼロ」に意味があります。

長さや年齢、質量は比尺度です。温度も上述のように絶対温度は比尺度です。

尺度のまとめ

尺度 大小比較
名義尺度 電話番号 × × ×
順序尺度 徒手筋力検査法 × ×
間隔尺度 温度(℃) ×
比尺度 歩行スピード

正確に評価するとはどういうことか

信頼性と妥当性

信頼性とは、検査や測定により得られたデータが、どの程度正確で安定しているかどうか、ということです。信頼性が高いとは、仮に同じ条件のもとで、同じ検査や測定を繰り返し行った場合、同じ結果が得られることを意味します。

妥当性とは、検査や測定が目的に合っているか、また、検査や測定しようとしている内容が漏れなくデータとして得られるかどうか、といういうことを意味します。

信頼性と妥当性については、下図のようなダーツのモデルで説明できます。

信頼性と妥当性のモデル図

理学療法評価においては、検査・測定の手技や手順を習得し、検査・測定の信頼性を高めることが求められます。また、それぞれの検査・測定から得られる結果が、生活機能の中で何を評価しているのか理解することが求められます。そして、これが一番重要なことかもしれませんが、面接(問診)や観察(視診)などによる全体像の評価で生活機能の障害が疑われた場合、どの検査・測定や評価を用いるのが妥当なのか(1種類だけでなく複数の検査・測定や評価を組み合わせることもある)判断することが求められます。

生活機能(障害)に応じた評価の例示

脳卒中では、多くの場合、痙縮と呼ばれる運動機能障害が生じます。痙縮の特徴として、速い動きにより筋緊張が亢進する(速度依存性)、回復過程ではパターン化された一定の動き以外で関節を動かしにくい(共同運動)、ある筋の随意的な筋収縮により他の筋(他の肢や全身)の筋緊張が亢進する(連合反応)などが挙げられます。これらの徴候は以下の評価で確認できます。

  • 深部腱反射・病的反射の確認 [1] pp.131 → 痙縮の有無
  • 筋トーヌス検査 [1] pp.151 → 速度依存性
  • Brunnstrom test [1] pp.260 → 共同運動、連合反応

これらの評価により、腱反射が亢進している(名義尺度)、筋トーヌス検査で痙縮が確認された(名義尺度)、Brunnstrom testでStageIVと評価された(順序尺度)などの情報が得られます。これらの情報は、痙縮の有無や程度を客観的に表す点で重要です。しかし、これらの情報は、痙縮の症状や徴候を一定の条件のもとで定められた尺度で表した、症状や徴候を「切り取った」情報であることも考慮する必要があります。

[1] 松澤正、他: 理学療法評価学 第6版, 金原出版, 2018

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1 COMMENT

評価を理学療法に活かす | KOTA's Lab.

[…] 脳卒中により生じる痙縮の特徴を理解し、対象者の麻痺の程度や特徴を評価する必要があります。痙縮の評価については、病態に応じた評価の例示で説明しました。これらの評価をもとに、どの大きさのボールを使い、どの程度の範囲でボールを転がし、何回反復し、動きの中でどこに注意を向けてもらうかなど、練習の内容を詳細に決めます。 […]

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