理学療法の法的定義

理学療法士法及び作業療法士法における理学療法の定義

理学療法士及び作業療法士法では、理学療法についてのように定義されています。この定義の言葉を一つ一つ確認していくと、理学療法士の仕事が幅広く、また、奥深いことが理解できます。ここでは簡単に説明しておきます。

<図 理学療法士及び作業療法士法における理学療法の定義>

理学療法の対象者

まず、理学療法の対象者は「身体に障害のある者」と定義されています。身体に障害のある状態は一般的には「動くことに関する障害」と捉えられると思います。しかし、法律において身体障害とは、動くことに関する障害(専門用語では肢体不自由)の他に、視覚障害や内部障害(心臓、呼吸器などの内臓障害)なども含まれます。理学療法の対象となる障害の多くは肢体不自由です。しかし、例えば、脳卒中という脳の病気になった人の中には、体を動かすことの障害はほとんどなくても、視野が狭くなり安全に歩けなくなることがあり、理学療法士と一緒に安全に歩く練習を行うこともあります。これは、肢体不自由はほとんど問題にならないものの、視覚障害により歩くことができなくなった事例です。このように「身体に障害のある者」を対象にするということは広範囲な病気や障害を対象にすることなのです。

また、動くことに直接関連しない病気であっても、一定期間、寝たきり状態になると体が弱ってしまい、身体に障害のある状態になることもあります。例えば、消化器など内臓の手術で長時間の全身麻酔を必要とし、その後、しばらく安静にした際にも、高齢者であれば体が弱ってしまい、動くことに関する障害が生じることも少なくありません。このようなケースも理学療法の対象になります。また、認知症や統合失調症など精神に障害のある人であっても、何らかの理由で身体にも障害の生じた場合には理学療法の対象になります。つまり、身体に障害があり、かつ、精神にも障害がある人が理学療法の対象になることは少なくありません。このように、「身体に障害のある者」の範囲は広いのです。

理学療法の目的

次に、理学療法の目的を見てみましょう。「基本的動作能力の回復を図るため」と書かれています。ここでいう基本的動作能力とは、一般的には寝ている状態から起き上がる、座る、立つ、歩く、階段を昇るなど、日常生活での動きを細かい要素に分けたものです。理学療法ではこれらの動きそのものの改善を図るために、筋力をつけたり、持久力をつけたり、関節を柔らかくしたり、脳の働きと連動させて上手に動くことができるように練習したりします。しかし、これだけにとどまりません。日常生活での活動(食事をする、トイレに行く、お風呂に入るなど)において基本的動作能力を最大限に発揮できるよう練習します。

歩く動作を例に考えてみても、理学療法室を練習として歩くのと、友人と会話しながら歩くのと、人ごみの中を両手に重たい買い物袋を持って歩くのでは、必要な基本的動作能力が異なります。ただ歩くという能力に加えて、複数のことに意識を向ける能力や、重たい荷物を持つ能力、障害物(対面から向かってくる人)をよける能力など様々な能力が必要になります。基本的動作能力といっても奥が深いのです。別の例をあげましょう。手首を骨折した人がいて、手首の関節や指の関節が硬くなり動きにくくなったとします。基本動作能力を回復させるために筋力をつけたり、関節を柔らかくしたり、様々な練習をしますが、この人の職業が、重たい荷物を運ぶ運送業の人と、実業団野球の選手と、ピアノ教室の先生とでは、必要な能力がかなり変わることは容易に想像できるはずです。つまり、基本的動作能力の回復を図るためには日常生活の活動や応用的動作についても詳しい必要があります。

理学療法の手段

最後に手段です。これも対象者や目的と同様に広い定義となっています。

治療体操というのは、ある種の決められた体操というイメージを持つかもしれません。おそらく、この法律ができた当時は病気や怪我に対して決められた体操を行うことが多かったのかもしれません。しかし、法律では治療体操の後に「その他の運動」と定められています。対象者や目的で説明したように、理学療法が幅広く奥深い範囲を網羅できるのも、手段に「その他の運動」と定義されているからといっても過言ではありません。理学療法士は、対象者の状況や病気や障害の状態に合わせた最適な運動を提案しなければならないのです。運動といっても、種々のトレーニング、動き方の指導、動くときに身に付けるもの(靴や杖など)や動く環境への配慮など幅広いのです。

同様に、「その他の物理的手段」という規定も幅広く、ここに定められていない振動刺激、超音波、水流など様々な物理的手段を扱うことができます。

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2 COMMENTS

理学療法の位置付け | KOTA's Lab.

[…] 理学療法は、理学療法の法的定義で説明したように、手段としての治療法です。これに対して、リハビリテーションは、リハビリテーションについてで説明したように、全人間的復権という目的としての概念です。ですから、これら2つの言葉の意味や用途は明確に異なります<表 理学療法とリハビリテーション>。 […]

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手段としての理学療法の構成 | KOTA's Lab. にコメントする コメントをキャンセル

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